監査がうまくいかない本当の理由

監査が終わらない
- 監査担当者がころころ変わり、同じ質問を何度も受ける。同じ資料の提示を何度も要求される。
- 監査の終わりが見えず、進捗の報告もない。
- 質問しても回答が遅い。直前に意見が変わる。
監査を受ける会社の悩みとして、代表的なものではないでしょうか。
このような悩みを放置することで、
- 取締役会への報告後に決算数値が変わる。
- 高負荷の状態が続き、怖くて経理担当者をローテーションできない。経理が属人化する
- 監査時間が増加し、監査報酬の増額を要求される。
といった追加の問題が考えられます。
監査人と監査を受ける会社との関係は、年々悪くなっていると感じています。
監査がうまくいかない本当の理由
このような問題が起きるのはなぜでしょうか。
監査人の能力が足りないのでしょうか。
監査人にサービス精神がないのでしょうか。
私も長く大手監査法人で監査業務を担当してきましたが、
そんなことはないと言い切れます。
ほとんどの会計士は能力が高く、
会社により良い監査を提供したい、
会社のためになる改善提案がしたいと思っています。
みんな余裕がないんです。
会計基準、監査基準は毎年のように変わります。
監査計画、期中監査、期末監査、四半期レビュー、
内部統制監査と今では1年中繁忙期が続きます。
そして、近年の会計不祥事から、
監査人を見る目は年々厳しくなっています。
大手監査法人は毎年のように外部レビューを受ける必要があります。
いわゆる、監査の監査です。
監査品質に対する外部レビュー
監査品質は、事務所ごとに大きな開きがある以上、
外部レビューが必要であることは間違いありません。
しかし、過度なレビューによるデメリットが大きくなっていることも事実です。
- 日本公認会計士協会の品質管理レビュー
- 公認会計士・監査審査会(金融庁)の検査
- 提携する海外会計事務所(PwCなど)の内部品質管理レビュー
- 米国上場会社の監査を担当してれば、米国公開企業会計監視委員会(PCAOB)の検査
監査品質に対する外部レビューは、上記のように多岐にわたり、
大手監査法人では毎年必ずどこかの検査を受けます。
監査が適切だったかについてかなり厳しくチェックが行われます。
チェック者が増えれば、当然のことながら指摘事項も増えます。
監査法人では、すべての指摘事項への対応が要求されます。
指摘事項に対応するためのチェックリストは、
チェックリストの体をなさず、もはや本の分厚さです。
監査の目的はチェックリストを埋めることと言っても、
言い過ぎではありません。
そのため、監査の問題を自覚しながらも、
山積みとなった目先の要求事項の対応に忙殺され、
みんな余裕がなくなっています。
監査現場の思考停止
あらゆる角度からのあらゆる指摘が続き、監査のやり直しが頻発する
→ 自分で判断してもムダと思い、考えることをやめてしまう
→ 高い志と専門性を持つ公認会計士が、言われたことだけやるので指示して欲しいというマインドになる
これは、監査スタッフだけの問題ではありません。
監査責任者であるパートナーですら、自信をもって「これが正しい監査手続だ」
と、断言することが難しくなっているのです。
私は、これが現在の監査における最大の悩みだと考えています。
解決策はあるのか?
大手監査法人では、非上場会社に対しても、
上場会社とほぼ同水準の監査が実施されます。
提携する海外会計事務所が用意する
監査ガイドラインにも準拠する必要があります。
これは、非上場会社にとって、過度な監査負担だと考えます。
一方で、小規模の監査事務所では、外部レビューの頻度は、
大規模監査法人に比べて格段に少なくなり、
いわゆるチェックリストを潰すことだけを目的とした監査の割合は少なくなります。
日本の監査基準にしたがった必要最低限の監査で、
最短距離の監査を行うことができます。
したがって、非上場会社であれば、
会社規模に見合った監査事務所を選択するというのが、
最も即効性のある解決策の1つだと考えます。