のれん非償却では監査ができない(IFRS 3号)

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Goodwill / chpaquette

日本基準とIFRSの大きなGAAP差異の1つとして、
のれんを償却するかどうかの議論があります。

日本基準は償却する、
IFRSは償却しない、です。  

私見ですが、のれんは償却すべきです。

むしろ、お願いだから償却させてください。」
と、言ってもいいぐらいのレベルです。  

のれんを償却しないと

のれんは巨額になることが多いです。
償却しないと巨額のまま、BSに居座り続けます。  

のれんの金額が大きいほど、
会社に体力がないほど、
減損テストをする前から 減損の選択肢は(ほぼ)ゼロです。  

どれだけ正論を言おうが、 無理なものは無理です。
絶対に落とせません。  

そこで監査現場で何が起きるかというと、
達成できそうにない将来利益計画でも、
「なんとか行けそうだ」というレベルまで 理由付けをする
という作業が始まります。  

これが地獄です。  

監査報告書までに、もうダメだ、
もう無理だとなんど絶望したかわかりません。
(不思議なことに全て乗り越えてきましたが)  

これは日本の監査現場がおかしいとかではないです。
IFRSを適用している国を含めた全世界共通で発生している問題です。  

むしろ、日本の監査人がいちばん真面目に
減損テストしていると本気で思っています。  

IFRSがのれんを償却しないと言っている理由

以下は、企業会計基準委員会(ASBJ)が 2014年7月31日に公表した
「修正会計基準公開草案第 1 号 のれんの会計処理(案)」からの引用です。  

12. しかし、IASB により、次の理由から IFRS 第 3 号(2004 年)においてのれんを非償却とすることが決定された
(IFRS 第 3 号(2004 年)BC140 項及び BC142 項)。

(1) 取得したのれんの耐用年数及びのれんが費消されるパターンは、一般に予測不能である。恣意的な期間でのれんの定額償却を行っても、有用な情報を提供することはできない。

(2) のれんが資産である場合、(例えば広告と顧客サービスに資源を費消することなどによって)企業がのれんの全体的な価値を維持できる場合には、企業結合で取得したのれんが費消され、自己創設のれんによって置換されるということは事実である。

しかし、企業結合後における支出により創出される自己創設のれんが認識されない状況において、企業結合で取得したのれんの費消を表す償却費の有用性については疑問がある。

(3) 厳格で実用的な減損テストを開発できれば、のれんを償却しなくても、財務諸表利用者に、より有益な情報を提供することができる。

以下、私の考えです。
あくまで実務的な観点から考えてるので、 理論的でない点はご容赦ください。

(1) 恣意的な期間が問題なら、一律の期間でいいので償却すべきだと思います。
のれんに価値がある、ないの判断こそ恣意的です。

(2) 自己創設のれんを認識しないなら、償却費だっていらないだろうと言っています。
「疑問がある」なんて表現は、言いがかりをつけているだけと思えます。
(大前提として、自己創設のれんは認識しないという世界共通ルールがあります。
自己創設のれんの反対が、M&Aなどで外から買ってきたのれんで、資産計上されているものです。)

(3) 減損テストする前から(ほぼ)結論は決まっています。  

のれんの償却は日本基準にがんばって欲しい

これだけは、絶対に譲歩して欲しくないですね。

IFRSの学者たちを監査現場に呼んで、
徹夜してもらいたいと何度思ったことかわかりません。  

現在の議論では、IFRSでものれんを償却すべき
との意見が多数派のようで非常に安心しています。

ASBJ、EFRAG及びOICが、ディスカッション・ペーパー「のれんはなお償却しなくてよいか―のれんの会計処理及び開示」に寄せられた回答に関するフィードバック・ステートメントを公表  

私は、極端ですが、 のれんには1円の価値もないと思っています。  

のれんを多額に計上している 会社の監査は引き受けない、
今のところ、監査人の身を守る唯一の方法 ではないかと思います。