幻の会計基準

2015年6月30日に、ASBJが
修正国際基準(JIMS)を公表しました。
JIMSは、IFRSから以下の2つを
修正しています。
①のれんの会計処理
IFRSは非償却
JIMSは償却
②その他の包括利益の会計処理
IFRSはノンリサイクリング
(その他の包括利益をPLに戻さない)
JIMSはリサイクリングする
2016 年3月31 日以後終了する
連結会計年度に係る連結財務諸表から
適用することができます。
四半期では、
2016 年4月1日以後開始する
連結会計年度に係る四半期連結財務諸表から
適用することができます。
JIMSはなぜ作成されたのか?
正直、よく理解できません。
日本基準は正しいと主張するために
作成したのでしょうか。
私の会計処理に対する見解は、
基本的にASBJと一致しています。
中でも、「のれんは償却すべき」という
ところは強く同意しています。
しかし、私の意見はあくまでも
監査する立場の視点です。
のれんを非償却とした場合、
減損以外ではのれんが費用化されないため
のれんの減損テストが
とてつもなく重要になります。
しかし、のれんの減損テストには
以下の難しさがあります。
- のれんの減損テストは見積もりの塊であることから、見積もりの過程で発生する個々の変数を操作することで、望む結果を得ることができること
- 金額が巨額になり易いこと
- 監査クライアントから報酬をもらって、監査をするという構造的矛盾
これらを考慮すると、
監査に期待されても限界がある
と考えています。
しかし、立場が変われば、
当然、意見も変わります。
のれん非償却を望む経営者もいます。
そのために、IFRSを導入するとしても、
それは経営判断として正しいです
経営者以外の財務諸表利用者でも、
のれん非償却を望む人はいます。
様々な立場から考えれば
のれんの償却、非償却に優劣はつけられない
だからこそ、議論が活発になっているのだと思います。
しかし、議論も収束していないのに自分の意見を
貫くために新しい会計基準を作ったのだとしたら、
早計だったかと思います。
JIMSは、IFRSではないという点で
何1つ日本基準と変わらず、
企業がJIMSを適用するメリットが見えてきません。
時間とお金をかけて作成した会計基準のはずですが、
1社も適用しない幻の会計基準となるのでしょうか。。。
JMISの公開は、昨年の7月だったのでは?
2014年7月は公開草案で、今回公表されたのが最終基準になります。
なるほど。了解いたしました。でも、JMISでも退職給付債務関係の2項目はリサイクルしないのでは?
実は、私、以前、SAPジャパンのIFRS支援室のコラムニストをしていました。
お盆明けに、連結会計とIFRSの入門書を出版します。今、校正中です。良かったら一冊買って下さい。
出版おめでとうございます。
JIMSではリサイクルすると思いますよ。