1年以内にIFRS導入するための7つのポイント

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今回は、短い期間でIFRS導入を

達成するための方法について解説します。

 

平成27年3月期の決算短信から

「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の

記載が始まりました。

 

週間経営財務3216号(2015年6月15日)によれば、

IFRSの適用に含みを持たせた記載をした会社は

1,423社中120社で、

IFRSの適用時期まで記載している会社は16社でした。

 

適用時期の記載を見ると、

平成29年3月期以降としている会社が最も多く、

IFRS導入の準備期間に最低でも2年は必要と

考えていることがわかります。

 

しかし、私の経験上、グローバルに展開する

トヨタやソニーのような超大企業は別として、

中堅規模の会社や大企業の子会社などは、

1年あればIFRSを導入できると考えています。

 

以前、最短距離のIFRS導入方法という記事を

書きましたが、今回は、それを再度整理して

7つのポイントにまとめました。

 

1.IFRS導入のプロジェクト管理は自社で行う

 

今回の最重要ポイントです。

 

よく、プロジェクト管理を監査法人に

任せてしまう会社を見かけますが、

その場合は最短でも2年、平均で3年は必要となる

工程表が提示されることになります。

 

中でも、自社の監査人である監査法人に

IFRSアドバザリー業務を

依頼する場合には注意が必要です。

 

監査上の判断を慎重に行いたいこと、

プロジェクト期間が長いほど売上が増えることから、

プロジェクトを引き伸ばされる可能性は高くなります。

 

私がIFRS導入をサポートした会社では、

「半年でIFRSを導入する」という強い意志のもと、

プロジェクト管理を主体的に進めることで、

それを達成しました。

 

当初、監査法人には「半年では絶対にできない」と

言われていましたが、

クライアントに締め切りを設定されれば、

従うしかありません。

 

現在、IFRSは任意適用のため、

強制力が働きにくいと言えます。

 

だからこそ、プロジェクト管理こそが

IFRS導入のキモであり、自ら明確な締め切りを設定し、

その締め切りに監査法人を巻き込む必要があります。

 

2.IFRS導入アドバイザリー業務を監査法人に依頼する

 

先の話と矛盾するようですが、

監査上の判断をその都度もらえる

というメリットは、とても大きいです。

 

監査法人に確認せずに進めても、

最後に監査でNoと言われたら身も蓋もありません。

 

最短距離でIFRS導入するためには、

監査法人の協力は必須と言わざるを得ません。

 

それでもIFRS導入プロジェクトの主導権を

監査法人に委ねるべきではありません。

 

1年以内にIFRS導入を進めるためには、

プロジェクト管理に加えて、

会計方針の決定や会計方針の根拠となる理論武装も

主体的に進める必要があります。

 

自社で進めることが難しい場合は、

外部のコンサルティングを利用する

ことも検討すべきです。

 

3.IFRS導入で欲張らない

 

金融庁が2015年4月15日に

「IFRS適用レポート」を公表しました。

 

IFRSを適用している会社に対して行った

実態調査・ヒアリングの結果をまとめたレポートです。

 

IFRS適用レポートによれば、

IFRS導入に要したコストは「1億円以上5億円未満」が

48社中17社と最も多くなっています。

 

1億円以上もかかるのであれば、子会社管理を効率化したい、

組織を変えたい、業務プロセス見直したいなどと、

本来の目的であるIFRS財務諸表の作成以外のことも

やりたくなると思います。

 

しかし、ここで欲張ってはいけません。

 

IFRS財務諸表を作成するだけでも、

膨大な量のタスクが存在します。

他のことに手を付けることでプロジェクトが

さらに複雑化し、収集がつかなくなります。

 

唯一、同時並行で進められそうな作業は

決算の効率化ですが、それであっても

IFRS財務諸表を作成するという最終結果に

フォーカスすることを忘れてはいけません。

 

4.IFRS導入の計画(ロードマップ)は速やかに終わらせる

 

社長在任中に「残業ゼロ」を掲げ、それを100%達成した

トリンプ・インターナショナル・ジャパン元社長の

吉越浩一郎氏によれば、ミスを減らす鉄則は

「1秒でも早く着手する」ことだそうです。

 

IFRS導入を進めていると、

  • 会計方針を決めたが、思うように情報を集められない
  • 監査法人の了解が得られない
  • 役員が納得しない

といった手戻りが必ず発生します。

 

少しでも早くとりかかることで、

軌道修正の時間を十分にとることができます。

一方で、始めるのが遅いと、

それこそ手遅れになることも考えられます。

 

計画を立てることは大切ですが、

そこに時間をかけ過ぎるべきではありません。

 

計画の完成度は80%ぐらいまでは

すぐに高めることができますが、

そこから100%に近づけるには、

多大な労力と時間が必要となります。

 

さらに綿密な計画ほど、

後で修正することに手間を感じます。

 

時間を有効に使うためにも、

計画は速やかに終わらせるべきです。

 

5.IFRS導入は開示から行う

 

検討に数ヶ月を要するような、

日本基準とIFRSとの会計基準の差異は、

かなり少なくなったと思います。

 

IFRSベースのBS、PLまでであれば、

さほど時間をかけずに作成できます。

 

現在、IFRS導入に関し最も工数のかかる領域は、

開示ではないでしょうか。

 

開示については以下の2点から

できるだけ早い段階で着手すべきです。

 

① 外部に対して何を開示するかは、

経営者の重要な意思決定になるべき問題です。

 

日本基準と異なり、IFRSの開示は自由度が高く、

決められたテンプレートが存在しません。

 

会社が大きくなるほど意思決定は複雑になるので、

早めの対応を心掛ける必要があります。

 

② 最終の開示によって、BS、PLを作る段階から、

どのように情報収集するかが、変わります。

 

開示を意識せずにBS、PLを作成すると、

開示の段階になって必要な情報を集められない、

または集めるのに想定外の時間が

必要になることもあります。

 

6.IFRS導入は現状の仕組み(ITシステムや業務プロセス)で勝負する

 

まずは現状の仕組みでどこまでできるか、

実際に仕訳の起票や、開示に必要な情報の

収集までやってみます。

 

何も変更しなくても対応できることの方が多いはずです。

 

同じく金融庁が公表したIFRS適用レポートでは、

システム改修などを行わずに

IFRSを適用した会社の回答が記載されています。

 

具体的には、連結仕訳の調整のみ、または連結仕訳の調整中心で対応した企業では、

  • システムについては、表計算ソフトにより財務諸表を効率的に作成できる仕組みを構築したため、特段の対応をしていない。
  • 連結決算用のパッケージはもともと表計算ソフトをベースにしており、IFRS対応は特定項目の修正で対応できた。

と回答しており、規模が相対的に小さくかつ単一事業である場合には、金額的にも極めて少額で対応できている例がある。

 

システムを全面改修したいというニーズがない限りは、

現状の仕組みで勝負することが

1年以内にIFRS導入するための必須条件です。

 

7.IFRS導入でアカウンティング・マニュアル、業務フローは最後に作成する

 

アカウンティング・マニュアルは、IFRS会計方針書や

グループ会計方針書などとも呼ばれます。

 

マニュアルや業務フローは、

監査法人から必ず要求されます。

 

しかし、IFRS導入のゴールは、

当然のことながらマニュアルではありません。

 

IFRSベースの財務諸表です。

 

マニュアルがないことを理由として、監査法人から

監査意見がもらえないということはあるでしょうか?

 

監査対象であるIFRSベースの財務諸表が

しっかり作成されていれば、それはあり得ません。

 

マニュアルはIFRS財務諸表を作成するための手段であり、

目的と手段を取り違えてはいけません。

 

マニュアルや業務フローは、

完成したIFRSベースの財務諸表を参考にしながら

作成した方が効率的です。

 

結果として、作成するのは最後になります。

 

 

以上です。

 

4、5年ほど前であれば、IFRS導入事例が

少ないためIFRS導入まで2年以上かかる

というのが常識だったと思います。

 

しかし、IFRS導入企業が徐々に

増えてきた現在の環境下であれば、

1年以内でも十分達成できるはずです。

 

ご参考になれば幸いです。