新税効果基準 適用初年度の取扱いは何が良いか

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現在、検討中の
「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」において、
適用初年度の取扱いが議論になっているようです。

議論の対象は、適用初年度の影響額を

  • 剰余金調整
  • 損益

のいずれとするか、です。

公開草案では、
剰余金調整とされていました。

これに反対しているのが、
決算書の作成者側です。

作成者側の主張

今回の改正による影響で、
繰延税金資産の計上額は増える傾向にあります。

繰延税金資産を計上すれば、
通常は、PL上で利益となるのですが、
公開草案のとおり、剰余金調整とした場合には、
利益は計上できません。

一方で、繰延税金資産を取り崩す場合には、
PLを通して損失計上することになります。

これは不整合ではないか、という主張が1つ。

もう1つの主張は、

  • 監査委員会報告第66号はルール自体が会計上の見積りである
  • 新たな指針の適用は見積りの変更に該当するので損益とすべき

というものです。

2つめは、少々苦しいですね。。

損益処理にしたいホンネは?

作成者側が、損益処理を強く主張するのには、
作業上の手間が影響しているのかなと、思っています。

会社法の計算書類の場合、
過年度のBS、PLは表示されないので、
期首剰余金を調整するだけで済みます。

それに対して、有価証券報告書の場合、
過年度のBS、PLまで修正する必要があるので、
けっこうな手間です。

でもって、従来の日本基準では、
過去に確定したBS、PLは絶対的なもので、
よほどのことがない限り、触ってはいけないとされていました。

なので、過去の数字を修正することに対する
アレルギーは、いまだ根強く残っているのではないでしょうか。

折衷案

剰余金調整か、損益か、意見がまとまらないので、
折衷案も出ているようです。

以下は、経営財務3237号からの引用です。

事務局は審議の過程で66号の定めを「実質的に変更している部分」については「会計方針の変更」として影響額を利益剰余金で調整する案を示した。
具体的には、下記3つの取扱いを適用する場合が該当する。

①分類2の企業において、スケジューリング不能な将来減算一時差異について回収可能であることを合理的に説明できる場合には回収可能性があるとする取扱い
(公開草案第21項参照)
②分類3の企業において、おおむね5年を明らかに超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能性があるとする取扱い
(公開草案第24項参照)
③分類4に該当する企業でも、将来において一時差異等加減算前課税所得が生じることを合理的に説明できる場合には分類2に該当するものとする取扱い
(公開草案第28項参照)

どれが良いか?

折衷案でなければ、
剰余金調整でも、損益でも、
どちらでもよいです。

折衷案は、中途半端ですね。
繰延税金資産に色を付けて、処理を分けたところで、
喜ぶ人がほとんどいないのではないか、と。

理論的にしっくりくるのが、剰余金の調整で、
実務のニーズに応えるのであれば、損益処理です。

損益とした場合、「IFRSと整合しなくなる」
という考え方もできますが、
回収可能性の5分類を踏襲した時点で、
どこまでいっても純粋な日本基準です。

なので、中途半端にIFRSに気を遣う必要もなく、
全額損益処理でも、特に問題はないのかな、と思う次第です。