会社法監査は決算短信の発表前に終わらせているか?

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日本公認会計士協会が、平成27年9月17日に、
「会社法監査に関する実態調査-不正リスク対応基準の導入を受けて」
を公表しました。

大まかな内容は、

  • 近年の相次ぐ不正を受けて、十分な監査時間の確保が要求されている。
  • しかし、その一方で東証による決算短信の開示を早期化する要請がある。

このような、2つの相反する社会的要請があるなか、

  • 会社法監査の完了日は、決算短信の発表日の影響を受けている。
  • 会社法で保証されている監査期間よりも、短い期間で監査を終わらせているのではないか?

という現状を調査したものになります。

この議論は、10年以上前から言われていますが、
今でも何も変わらず、同じ問題を抱えています。

もう少し突っ込んで見てみます。

監査期間の確保について

会社計算規則130条で、会計監査人の監査報告は、
次のいずれか遅い日までに、特定監査役及び特定取締役に対し、
その内容を通知しなければならないとされています。

① 計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日
② 附属明細書を受領した日から1週間を経過した日
③ 特定取締役、特定監査役及び会計監査人の間で合意により定めた日があるときは、その日

これにより、制度上は、監査期間の確保が保証されています。

会社法監査報告の日付と決算短信公表日の比較

決算日からの所要日数
(東証に上場する平成27 年3月期決算会社2,366 社の平均)

  • 決算短信発表日 平均39.8日
  • 会社法監査報告書日 平均44.3日

会社法監査を決算日から44.3日で終わらせ、かつ、会社法の規則どおり、
「計算書類の受領から4週間」の監査期間を確保するためには、
会計監査人が、4月半ばまでに、計算書類を受領している必要があります。

しかし、現実問題として、それは考えにくく、
計算書類の受領日はあやふやになっています。

決算短信発表日と会社法監査報告書日が近いことから、
短信発表にあわせて監査は進んでいると考えられます。

実際には、計算書類を受領する前から監査は始まっているので、
計算書類の受領日から監査の完了日を決めることが、実情にそぐわないとも言えます。

監査時間が増える要因

上場会社の監査に従事する公認会計士のアンケート結果のなかに、
「監査時間が増える続ける要因」に関する記述がありました。

① 会計基準の国際化により会計基準が新たに設定され、財務諸表が複雑化、高度化している。
② 被監査対象会社の国際化により海外子会社等が増加し、グループ監査などの監査上の対応事項が増加している。
③ 監査基準の要求事項の増加(例えば、監査基準委員会報告書の要求事項の増加、不正リク対応基準などの新しい基準の適用)により、
以前と比べると監査上の検討事項の質的、量的な項目の増加や文書化の項目が増えている。
④ 公認会計士・監査審査会などへの検査対応のため、監査調書への文書化等の作業量が増加している。

全てそのとおりですね。
会計監査に従事している人は、全員が同じ感想を抱いていると思います。

まとめ

決算短信と会社法監査は、制度上、別個の要求に基づいている。
なので、会社法監査は、決算短信発表の影響を受けるべきではない。

たしかにその通りで、このことが、
監査業務が平準化できない最大の要因になっています。

しかし、短信発表後に決算の数字が変わらないように
会社法監査を進めるのは、もはや「あたり前」です。

毎年のように、より早く、より正確に、
より難しいことが要求されており、今後もこの傾向は続きます。

どんなに、「無理だ」と思うことがあっても、
慣れてしまうのが、習慣の怖いところです。