棚卸に命をかける人たち

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
083

棚卸立会は、実査、確認とならぶ監査の必須手続の一つです。

しかし、えらくなった会計士ほど棚卸立会はスタッフの仕事で、
自分が行くようなものではないと思っている人が多くいます。  

たしかに、 棚卸しに漏れがないか、カウントミスがないか、
これらを確認するだけの作業と思ってしまう気持ちはよくわかります。  

そういう意識で棚卸をしている会社が多く存在していることも事実です。  

しかし、製造業に関しては、
生半可な気持ちで棚卸立会に行ってはいけないと思っています。  

会社の人はめちゃくちゃ真剣です

私が大手製造業の工場へ棚卸立会に行ったときのはなしです。
その会社では、棚卸が最重要イベントの1つと考えられています。  

棚卸現場を巡回し、
抜き取りで会社のカウント結果を再カウントします。

そこで私がカウントミスを見つけたとき、
カウントを担当した方がえらくうなだれていました。  

同行してくれた経理の方いわく、
「かわいそうに。あいつ後で死ぬほど怒られますよ」

ほんの数十円から数百円のネジみたいな部品を
1つ数え間違えただけと思っていました。

私なら「間違えちゃいました。」
と、へらへらしてしまいそうです。  

棚卸立会後の講評会では、工場長(当然役員クラス)が我々に対して、
「今回の棚卸ではカウントミスが3件も見つかってしまいました。
非常に残念な結果です。再発防止に全力で努めます。」
と、真剣な表情でおっしゃってくれます。

会計士の再カウントは数十件程度に過ぎず、
ほとんどの再カウントは会社が独自でやっています。

会社が再カウントした数千件の中のたった3件です。
比率にすれば、0.00…%の世界です。  

重要性がない?

会計士の発想だと、
「重要性がないからどちらでもいいですよ」
と言ってしまいたくなります。

監査が終わらなくなるので、監査上の重要性はとても大事です。  

しかし、その会社では、財産管理、生産管理の観点から、
たとえ1円でも妥協できないという姿勢で棚卸にのぞんでいます。

重要性がないからOKと思ってしまう自分が
めちゃくちゃ恥ずかしくなりました。  

メイド・イン・ジャパンは世界一のブランド

これは、監査を担当していた外資系企業で、
日本の製造業を買収した理由として、
外国人CFOから言われたことのある言葉です。

海外からそう見られているんだと思って、よく覚えています。  

3月になると、この言葉とともに、棚卸のエピソードを思い出します。
その都度、日本のものづくりはやはり世界一だと誇らしく思います。

海外に工場をつくらずに、
全部、日本でつくればいいのにとさえ思っています。  

棚卸立会に行かないとこのような真剣な空気は
決して感じることはできないです。

定期的に現場を見ないと
理論だけの頭でっかちの会計士になってしまいます。  

なので、会計士なら棚卸立会に行かないのはもったいないのではないか、
というお話でした。