監査法人の交代制は導入すべきか?

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東芝が、監査法人を定期的に交代する制度
を導入することを検討しているそうです。

8月27日の毎日新聞の記事です。

不正会計問題で歴代3社長が辞任した東芝が、決算書類のチェックなど監査業務を行う監査法人について、複数年度で定期的に交代させる制度の導入を検討していることが26日明らかになった。
不正会計を巡っては、経営陣だけでなく、監査法人の責任を問う声も出ている。
東芝の現在の監査法人は半世紀以上も同じ法人が務めており、交代制を導入して監査法人との関係を厳格化。監査の透明性を高めて、信頼回復を図る。

この記事でいう、交代制を導入するねらいである
・監査法人との関係を厳格化
・監査の透明性を高める

これらを達成できるかは、微妙ではないでしょうか。

まず、監査法人との関係を厳格化は、
・会社のいいなりにならない
・会社と馴れ合わない

ということが言いたいのだと思うのですが、
東芝が監査法人にとって、
上顧客であることには変わりありません。

であれば、会社の顔色を伺わざるを得ないので、
根本的な解決にはならないと思います。

次の、監査の透明性を高めるは、
「私たちは監査法人を交代させているので、
馴れ合うことなく、適切な監査を受けています。」

と、世間にアピールできるということでしょうか。

正直、監査の透明性を高めるというのが
具体的に何を指すのかよくわかっていません。

なんとなく、不正会計の原因は監査だった
と、責任転嫁している感があります。

でも、アピールとして強烈なのは間違いないです。

交代制を導入することの最大のメリットは、
新しい目で監査ができることだと思います。

同じ人が、毎年、同じように見ていたら
なかなか新しい発見はありません。

違う人が監査していたら、
東芝の今回の不正会計のうちの
いくつかは見つかっていたかもしれません。

しかし、交代制によるデメリットも、これまた明確です。

監査がとにかく大変だということです。
初年度の監査ほどきついものはなく、
かえって大きな問題を見落とす可能性もあります。

東芝クラスの会社なら、
会計士が100人ぐらい必要になるかもしれません。

それでも、担当初年度から
東芝のような超巨大起業のことが
隅々までわかる会計士なんていないと思います。

監査を受ける側も、
次々に来る、新しい会計士に対応しないといけないので、
同じように、かなり大変です。

監査報酬に関しては、交代制の影響が全く読めません。

監査法人を交代する際に、単独指名はあり得ないので、
大手監査法人の中で、相見積もりをとることになります。

相見積りをすれば、通常は価格が下がります。

東芝は、なんだかんだで、
今でも、どの監査法人も顧客にしたい会社だと思いうので、
価格を下げてでも契約をとりにいく可能性があります。

一方で、交代した初年度の監査は、
前述のとおり、とても工数がかかります。
そのことは、監査報酬を押し上げる要因です。

初年度の監査報酬を2年目以降に
どれだけ維持できるかが、ポイントです。

初年度を安く受注してしまったら、
それも難しくなってしまいます。

欧州では来年度から
監査法人の交代制を導入するそうです。
これも毎日新聞の記事です。

金融庁などによると、欧州各国は、上場する大企業や金融機関に対する監査法人の交代制を来年から導入する。監査法人が連続で担当できる期限を原則10年とし、期限後の4年間は同じ企業の担当を禁じる。2008年のリーマン・ショックで「金融機関などの経営に対する監督が甘かったのではないか」との批判が出たことを受けた措置だ。

交代制は、どちらかというと、アピール的な側面が強く、
監査の根本的な解決策ではないと思っているので、
欧州の結果を見てから判断しても遅くないのではないでしょうか。

交代制はやるべきか?と言われたら、
よくわからないというのが、正直な感想です。