合意された手続(AUP)はなぜ保証されないか

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Financial Statement / lendingmemo

 

 

公認会計士が行う監査は、

財務情報を検証して

適正か不適正かを判断した結果

を報告するため、保証業務と言われます。

 

それに対して、合意された手続は、

依頼人と監査人で合意した

監査的手続を実施し、

その手続によって発見した事実

のみを報告します。

 

監査人は監査の対象となった

財務情報に対して、保証をしません。

 

監査人の報告書を利用して、依頼人が

自らの結論を出す必要があります。

 

合意された手続では、なぜ監査人は保証しないのか

 

たとえ、監査と全く同じ手続を

実施しても、保証はされません。

 

その理由は、監査対象となる

財務情報の違いにあります。

 

監査で保証するために、財務情報に

求められる要件が2つあります。

① 法律等で財務報告の枠組みが明確であること

② 完全な一組の財務諸表等であること

 

たとえば、会社法監査であれば

① 会社法に基づく

② 計算書類等

が監査対象です。

 

さらに、計算書類等は以下の全てを

含んでいる必要があります。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 個別注記表
  • 附属明細書

 

注記などを全て含めた状態を

完全な一組の財務諸表等といい、

たとえば、貸借対照表と損益計算書だけでは

監査対象とはなり得ません。

 

一方で、合意された手続では、

対象となる財務情報が多岐にわたります。

 

貸借対照表のみでもOKです。

 

さらに細かく、

売掛金のみ

買掛金のみ

でも合意された手続の対象になります。

 

最近の私の事例では、

移転価格文書として、

外国子会社との取引を切出して

作成した損益計算書(切出損益計算書)

が合意された手続の

対象となっています。

 

また、有名なものでは

一般労働者派遣事業の許可審査に係る

中間又は月次決算書に対して行う

合意された手続があります。

 

非公式な監査

 

余談ですが、一般労働者派遣事業の

新規許可の申請では、

厚生労働省による資産要件の審査に

公認会計士の監査証明を受けた

中間又は月次決算書の

提出が必要とされています。

 

有効期間の更新は、合意された手続で

当面の間は認められます。)

 

しかし、この監査について

日本公認会計士協会は、

正式な監査とは認めていないようです。

 

監査対象となる中間又は月次決算書は、

「完全な一組の財務諸表」の要件を

充たしていないためです。

 

そのため、監査契約書や監査報告書の

正式なテンプレートは公表されておらず、

臨時計算書類の監査報告書などを

各自カスタマイズして監査する

という実務が行われています。