工事進行基準は不正のデパート

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Construction Platform / wwarby

日本公認会計士協会が、2015年5月1日に、
「工事進行基準等の適用に関する監査上の取扱い」
(監査・保証実務委員会実務指針第91号) を公表しました。  

工事進行基準が幅広い業種で適用されていること、
不正事例が多いことがきっかけのようです。  

会計不祥事で大きなニュースとなった 東芝も工事進行基準がきっかけでした。  

工事契約は、採用する会計処理に関わらず、
もともと不正リスクの高い領域です。  

工事原価は金額も明細も膨大で、
中身がよくわからないためです。  

工事間の工事原価の付替えや
工事に関係ないものが 原価に突っ込まれていても、
なかなか見つけることができません。  

それに加えて、工事進行基準は 見積りのかたまりのため、
もっとも不正が起こりやすい会計基準
と言っても過言ではないと思います。  

過去の不正事例と不正リスクの要因

今週の経営財務(No. 3212)で
「工事進行基準等の適用に関する監査上の取扱い」
から過去の不正事例と不正リスクの要因が 抜粋されていました。  

① 意図的な工事契約の認識の単位の設定による工事損益率の調整。
② 工事収益総額が注文書又は契約書で確定していない場合の工事収益総額の不適切な見積り。
③ 実現可能性の低い原価低減活動による原価低減を考慮した工事原価総額の不適切な見積り。
④ 工事契約の管理者が故意に外注業者等又は会社内部の者と共謀し,発生した工事原価を異なる工事契約の工事原価とする等の原価の付替えを実施することによる工事原価の操作。
⑤ 工事契約の管理者が故意に外注業者等又は会社内部の者と共謀し,発生した工事原価を故意に計上しない又は架空原価を計上することによる工事原価の操作。
⑥ 工事契約の管理者が故意に外注業者等又は会社内部の者と共謀し,作業実績時間等の操作を行うことによる工事原価の操作。

列挙されている不正事例は どれも納得できるもので、
まさに典型例だと思います。  

②と③が工事進行基準に特有の 見積り項目の操作で、
売上計上の基礎となる工事の進捗度を 把握するために必須の項目です。  

それ以外は、工事原価の操作で、
工事完成基準を採用する場合でも同様の不正リスクが存在すると思います。  

すべて予算どおりが一番怪しい

工事担当者は、工事原価を操作することで、
全ての工事から利益が出ているように見せようとします。  

工事Aは黒字でした。 しかし、工事Bは赤字でした。
トータルでは黒字でした。  
という報告よりも、

工事Aも工事Bも黒字でした。  
という報告がしたいためです。  

それゆえ、昔の上司から、

  • 全ての工事契約が予算を達成している
  • 利益率もほぼ同じ水準である

この場合は逆に怪しいから
しっかりチェックしろ と言われたことがあります。  

しかし、予算どおりの工事を疑うのは、
何が正しいのか、拠り所がなくなります。  

実際やってみるのは、
かなり難しかったことをよく覚えています。  

売上計上のタイミングは会計と監査のキモ

物販の場合だと

  • 出荷の事実だけでは売上計上が早過ぎる
  • 相手が検収するまでは売上計上すべきでない

などと厳しく議論されているのに、 工事進行基準だけは、
見積りで売上計上できるので どうかなぁと思います。  

監査する立場としては、できることなら、
工事進行基準は なくなって欲しい会計基準です。(無理でしょうが。)  

東芝のような大きなニュースになることはまれですが、
水面下では毎年、必ずどこかで 不正が起きていると思っています。