上場準備会社の監査リスクと監査報酬

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Paperwork / kozumel

最近、IPO審査厳格化が、大きくニュースになっています。
日本取引所グループ 「最近の新規公開を巡る問題と対応について」  

当然、監査法人にも矛先が向くわけですが、
上場準備会社の会計監査については、
厳格化以前に安い監査報酬に問題があると思っています。  

どの監査法人も、上場会社のクライアントを 増やしたいがために、
監査報酬の値引き競争を行っています。  
そのため、受注できても十分なリソースを充てることができません。  

この問題は今に始まったことではありません。。。

私は上場準備会社の 監査に消極的な時期がありました。  
それは、今から10年以上さかのぼる ある思い出のせいです。
(辛い監査の思い出ばかり 書いていますが、たまたまです。)  

経理は後回し

外食チェーン店を営むその会社は、典型的な売上至上主義でした。  

J-SOXも導入前で、経理を含む管理部門には
1円足りともお金をかけたくありません。  

経理担当取締役は、60を過ぎた高齢の方が担当していました。  
肩書は立派ですが、お給料は当時2年目の監査スタッフ である私より少なかったです。  
ひどい話ですが、そういう人は安く使える と経営者は言っていました。  

若者は全員、前線に投入されるので、経理に若者は一人もいません。  

会社に有価証券届出書を 作成する能力などあるはずもなく、
全ページに修正依頼をする 付箋が貼り付けられました。  
会社も私も連日の徹夜でした。  

それでも、監査報酬はたしか 600万円ぐらいの安値でした。  
監査報酬は、上場したら1,000万円にするとの口約束がパートナーと経営者で取り交わされていたようです。
(本当はそんなことしたらダメです)  

しかし、上場した瞬間、 その会社は監査法人を変更しました。  

値段が高いという理由です。 義理も人情もありませんでした。。。
(そのわりに経営者は 高級車に乗り換えてましたが。)  

監査法人には旨味が少ない

徹夜の見返りとして、 監査法人には数百万円の報酬しか残りませんでした。  

そのとき私が感じたのは、  

  • 会計監査する立場で上場なんてやるものではない。
  • IPOの会計監査は、他人をお金持ちにするだけの仕事だ。

という感情でした。  

当時2年目のウブなスタッフの頃の思い出なので、
その時は、上場に対する見方が相当ひねくれました。

新興市場の株は買わないと神に誓ったぐらいです。  

今は、経営者が売上至上主義になる気持ちは 当然のように理解できますが。  

本当は上場準備の監査報酬こそ高くするべき

証券会社にも審査の役割はありますが、 引受手数料が主な収入源になる以上、
上場を目的とした審査になることは 否定できないと思います。  

さすがに独立性に問題があるので、 監査法人にまで成功報酬を求めるつもりはありません。  

しかし、監査報酬が安いという現状では、
監査厳格化という要求だけが増えるのでリスクに全く見合わない仕事だと言えます。    

監査法人は、上場後の継続的な 監査報酬を目当てにしているので、
IPOの時点で安くするのは やむを得ないとは思います。  

しかし、それがIPO審査厳格化という社会的要求にはそぐわない結果となっています。    

できることなら、監査法人間で談合でもして欲しい
とさえ思っています。