スプレッドシートのメンテナンス

過去に担当した監査クライアントの経理部長が、
どうしても決算が期限内に終わらないと、
アドバイスを求めてきたことがありました。
当初は、単純に人員が不足しているのでは?と考えましたが、
本当の理由はメンテナンスできないスプレッドシートにありました。
15年間使用し続けたスプレッドシート
この会社では、15年前に当時の優秀な経理部長が作成した
決算用のスプレッドシートを使用していました。
複雑な関数やマクロが組み込まれており、
そのシートで決算を組むと、
自動的に経営者への報告資料や税務申告書が完成する優れものです。
その経理部長が異動になった後も、
残された経理担当者たちは、そのシートを使用し続けました。
会社の業務、会計基準、税法などに変更があっても、
無理やりそのシートに当てはめていた結果、
スプレッドシートはツギハギだらけで、
関数やマクロもところどころ壊れている欠陥品になっていました。
決算は間違いだらけで、期限内に終わりません。
会社も監査人も修羅場でした。
どこの会社でも同じことは起きている
- 日々使用しているスプレッドシートに対して、「何かおかしい」と思いつつも、手を加えることができず、使用し続けている。
- スプレッドシートを作成した人が優秀であるほど、手を加えることがためらわれる。
- 意味がないと思いながら使用し続けているスプレッドシートがある。
どこの会社でも似たような経験があると思います。
スプレッドシートが緻密に作り込まれ、
完成度が高いほど、変えることへの抵抗感は大きくなります。
経理業務の属人化と標準化
経理業務の属人化とはよく言われます。
その反対が標準化です。
メンテナンスができないスプレッドシートは、
依存する対象が人からシートに変わっただけです。
属人化と大差ありません。
会社も、会計も、税務も日々変わり続けている以上、
変化に合わせたメンテナンスができてこその標準化です。
不要になれば捨てる勇気も必要です。
メンテナンスの観点からも、スプレッドシートは、
シンプルなものにすべきです。
複雑な関数やマクロは便利かもしれませんが、
私がおすすめしない理由はここにあります。
スプレッドシートの作成については、
こちらの記事もぜひご覧ください。
見やすいスプレッドシートを作成する7つのポイント