内部統制とコーポレートガバナンスの違い

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Dictionary / greeblie

東芝の会計不祥事では、
・内部統制がぜい弱だった
・コーポレートガバナンスが形骸化していた
・だから強化しろ
というようなことが、よく言われています。

しかし、何を、どのように強化するのか?
具体的にイメージすることは、
難しくないでしょうか。

そもそも、内部統制とコーポレートガバナンスは何が違うのか?
ということも、はっきりしていないと思います。

でもって、私自身も両者の違いを
はっきりと理解していませんでした。

なので、今回は、内部統制とコーポレートガバナンスの違い
について、いろいろ調べてみました。

意外な発見もあったので共有したいと思います。

 

内部統制の定義

まず、両者の定義から確認します。

内部統制の定義は、企業会計審議会(金融庁)が公表している
「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」
に記述があります。

内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される。

定義の中に、内部統制の4つの目的と、
6つの基本的要素が含まれています。

どの項目も抽象度が高く、具体的事例がないと
なかなか理解することが難しいと思います。

コーポレートガバナンスの定義

コーポレートガバナンスには
明確な定義がなく、人によって定義は異なります。

直訳すれば「企業統治」ですが、
これでは意味がわかりません。

経営者を監視し、独走・暴走を未然に防ぐ仕組み
などが、よく言われる定義だったと思います。

今回は、2015年6月1日に東証が公表した
「コーポレートガバナンス・コード」
に書かれている定義を引用します。

おそらく、今現在もっとも客観的な定義ではないでしょうか。

コーポレートガバナンスとは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。

「経営者を監視する」といったニュアンスの言葉が入っていません。
コーポレートガバナンスの定義は大きく変わったのでしょうか。

内部統制とコーポレートガバナンスの定義を見て共通している点は、
当たり前かもしれませんが、
会社の仕組みであるということです。

でもって、理論や概念のような定義なので
抽象度が高く、そのままでは「違い」を理解できません。

なので、両者の違いを理解するために、
何を目的とした仕組みなのかという点を次に見ていきます。

内部統制の目的

内部統制の目的は、定義にあるように以下の4つです。
① 業務の有効性及び効率性
② 財務報告の信頼性
③ 事業活動に関わる法令等の遵守
④ 資産の保全

内部統制の目的に序列はないと思うのですが、
実務で着目されるのは、圧倒的に②財務報告の信頼性です。

監査法人が行う内部統制監査が、
財務報告に関係する内部統制だけを対象にしているからです。

コーポレートガバナンスの目的

コーポレートガバナンス・コードの
「基本原則」にその目的が書いてあります。

① 株主の権利・平等性の確保
② 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
③ 適切な情報開示と透明性の確保
④ 取締役会等の責務
⑤ 株主との対話

5つの目的のうち、④と⑤が特にわかりにくいと思います。
この点も、コーポレートガバナンス・コードの
「基本原則」に以下のように書かれています。

④は、

上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任、説明責任を踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るべく、
(1) 企業戦略等の大きな方向性を示すこと
(2) 経営幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと
(3) 独立した客観的な立場から、経営陣・取締役に対する実効性の高い監査を行うこと
をはじめとする役割・責務を適切に果たすべきである。

⑤は、

上場会社は、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主総会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行うべきである。

内部統制とコーポレートガバナンスの共通点

それぞれの目的を見て、明らかに共通しているのは、

内部統制における
② 財務報告の信頼性と、

コーポレートガバナンスにおける
③ 適切な情報開示と透明性の確保

この1点のみだということに気づきます。

内部統制とコーポレートガバナンスの相違点

わかり易い相違点から確認すると、
コーポレートガバナンスは
株主やステークホルダーを明確に意識していること
が、内部統制と大きく異なります。

次に、これまた抽象度が高くて難しい考え方なのですが、
いわゆる「攻めのガバナンス」といわれる点が異なります。

コーポレートガバナンス・コードの解説記事を読むと
「攻めのガバナンス」という言葉がよく出てきます。

コーポレートガバナンスの定義にも現れていて、
透明・公正かつ迅速・果断な意思決定
という部分が「攻め」に該当するのだと思います。

内部統制は100%守りの視点からの仕組みなので、
この点は、大きな違いになります。

では、何をもって「攻めのガバナンス」というのか

コーポレートガバナンス・コードに次の記述があります。

経営陣、取締役が損害賠償責任を負うか否かの判断に際しては、一般的に、その意思決定の時点における意思決定過程の合理性が重要な考慮要素の一つとなるものと考えられるが、本コードには、ここでいう意思決定過程の合理性を担保することに寄与すると考えられる内容が含まれており、本コードは、上場会社の透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を促す効果を持つこととなるものと期待している。

つまり、

コーポレートガバナンス・コードに従っていれば、
意思決定過程の合理性を対外的に説明することができます。
だから、安心してリスクテイクして、意思決定してください。

ということが言いたいのだと思います。

上場会社の経営陣の責任の重さを考えれば、
理解できなくもないですが、違和感を覚えます。

まず、会社が傾かせれば、意思決定過程の合理性など関係なく、
責任を問われると思います。

次に、コーポレートガバナンス・コードなどで、
規則を増やすほど、意思決定は遅くなって、
保守的になるのが通常ではないでしょうか。

社外取締役がその典型だと思います。

でもって、迅速・果断な意思決定は、
コーポレートガバナンス的にはご法度である
ワンマン社長こそが最適だと思うのです。

ただまあ、「それは、お前が経営を知らないからだ!」
と、言われたら反論もできないのですが。

なんとなく、守りの視点だけでは、ウケが悪いので、
攻めの視点を無理やり入れたような印象を受けます。

まとめ

コーポレートガバナンスの方が内部統制に比べて
会社の仕組みを、より大きな範囲で定義していると思います。

というのは、コーポレートガバナンスの目的を達成するには、
内部統制の全ての目的が達成できている必要があるからです。

特に、コーポレートガバナンスの
「適切な情報開示と透明性の確保」ですね。

さらに、コーポレートガバナンスは内部統制と比べて、
株主・ステークホルダー重視の姿勢と、
「攻めのガバナンス」が追加されます。

正直、私は、内部統制とコーポレートガバナンスは、
ほぼ同じ意味で使われている言葉だと思っていたので、
このことは大きな発見でした。

新聞などでコーポレートガバナンスの強化
という言葉を見たら、
「内部統制も含めて、全て強化しろってことね。」
と思っていいのではないでしょうか。

コーポレートガバナンスという言葉は、
あるべき姿なり、やりたいことを、いろいろ詰め込み過ぎて、
何がしたいのかわかり辛くなっています。

なので、コーポレートガバナンスの強化=全て強化
で、あながち間違いでもないなと、思っています。