全社統制の監査が嫌がられる理由

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
I hate snakes / kwl

監査をしていて、嫌なことは何か?

監査法人のスタッフに聞いたところ 以下の2つが挙げられました。  

1.大量の証憑突合
2.全社的な内部統制の評価  

大量の証憑突合については以前こちらの記事に書きました。  

全社的な内部統制(以下、全社統制)の 評価が嫌なのは、
監査スタッフに限らず、
監査を受けている会社も同じでは ないかと思いました。  

そこで今回は全社統制の評価が
なぜ嫌がられるのかについて
書いてみたいと思います。  

全社統制が重要とされる理由

まず、全社統制(特に統制環境)は
最も重要な内部統制とされています。  

立派な経理マニュアル、 経理システムがあり、
優秀な経理担当者がいても、 経営者が粉飾決算を指示すれば
内部統制は全く機能しません。  

そのため、経営者の姿勢などが
「統制環境」として全社統制に含められ、
内部統制監査の重要な評価項目とされています。  

全社的な内部統制の監査が嫌がられる理由

全社統制の評価は、内部統制監査で 最も難しいことの1つです。  

たとえば、

  • 内部通報制度がない
  • リスク管理規定がない

このような全社統制の不備があっても
それが会社の内部統制にどれだけマイナスであるかは、
会社ごとに異なります。  

会社の業務プロセス上、
実害が全くないことも 考えられます。  

全社統制が業務プロセス統制に
どのように影響するかということまで考える必要があり、
そういう意味では、全社統制の評価は本来は暫定的な評価のはずです。  

しかしながら、内部統制監査では
「全社統制の評価結果をふまえて 業務プロセス統制を評価する」
というアプローチがとられています。  

したがって、全社統制の有効性について、
この段階で何かしらの 評価結果が必要となります。  

当然のことながら、明確な評価基準はありません。  

そこで唯一、客観的な 評価基準となり得るのが
文書化ができているかどうか という点です。  

文書のありなしだけが 評価の対象とされることで、
監査自体が形骸化し、単なるアンケートになります。  

それに加えて、業務で全く使わない
監査でしか使わない文書が大量生産されることになります。  

その結果、会社も監査人もお互いに
全社統制の評価に意義を感じなくなっていると言えます。  

全社的な内部統制の監査が嫌がられるもう1つの理由

全社統制は重要であるが故に、
やる前から「不備なし」という結論になることが(ほぼ)決まっています。  

全社統制で不備を検出した場合、
それを業務プロセス統制の評価範囲、
評価方法にどのように影響させるか。  

その判断があまりにも難しいため、
全社統制で不備を出すことは かなり勇気がいることです。  

極端な例では、経営者の姿勢などは 絶対に内部統制の不備にはなりません。  

監査をしていれば経営者が管理面に
関心があるかどうかは肌感覚でわかります。  

しかし、「経営者の姿勢に問題あり」 と監査調書に残せば、
監査意見自体が出なくなります。  

このことが、全社統制の評価に意義を
感じなくなるもう1つの理由です。  

規制強化でまた文書化が増加?

現在問題となっている 東芝の会計不祥事などで、
監査に対する風当たりは ますます強くなると予想されます。  

規制が強化されるのは仕方ないにしても、
文書化の必要量が増えるのは本当に勘弁して欲しいです。  

今でさえ、監査では大量の文書化が要求されていて、
本来の監査対象である決算数値を見る余裕がなくなっています。  

今以上に文書化の量を増やせば、
かえって監査の見落としが増えるのではないかと懸念しています。