不正会計 究極の再発防止策

今週の経営財務(No.3222)の記事に
「これしかない」 と思えるような
不正会計の防止策がありました。
SEC:内部通報で報奨金3億円 内部通報による報奨金3百万ドル(約3.6億円)を支払う旨の公報が出た。この金額は、2014年の30百万ドル(約36億円)、2013年の14百万ドル(約16.8億円)に次ぐもので、制度開始以降、第3番目の金額となる。 制度開始以降、SECは50百万ドル(約60億円)を18名の内部通報者に支払ってきた。報奨金は、投資家を保護するための基金から支払われている。 報奨金は、SECへ重要な情報をもたらした内部通報に対し、1百万ドル(約1.2億円)を超える課徴金が発生した場合、その10-30%が報奨金として支払われることになっている。 (資料;SEC. “SEC Pays More Than $3 Million to Whistleblower.”July 17, 2015, sec.gov)
SECは、米国の証券取引委員会で、
日本でいう証券取引等監視委員会(金融庁)です。
東芝の不正会計は、
金融庁への内部通報が発覚のきっかけでした。
内部通報は内部統制監査よりも強力です。
社長が手を出せない仕組み
不正会計の再発防止のため、
内部統制の強化がメディアなどでよく叫ばれています。
たとえば、次のような案が挙げられていました。
- 社内監査部門が社長直轄の組織であったので機能しなかった。取締役会の直轄にすべき。
- 欧米のように、弁護士資格を持つ法務担当役員が子会社や事業部門を監視する役割を持つ。法務担当役員に情報を集めない場合は処罰の対象とする。
これらの内部統制の強化案は、社長の影響を排除できていません。
むしろ、社長の意を受けて動くのが本来の姿です。
東芝の不正会計のように経営トップ主導の場合。
本当に効果のある再発防止策は、
社長が手を出せないものである必要があり、
その代表例が内部通報制度です。
ただし、内部通報制度でも、 社内で整備したものではいけません。
通報の窓口を弁護士事務所にしても、
通報の内容はどこかのタイミングで経営陣の耳に入ります。
弁護士事務所も、会社からお金をもらっている以上、
社長に不利益な報告を独断で行うことはありません。
従業員の不正には効果的なので導入すべきですが、
これも社長のためにある仕組みです。
内部通報にはリスクしかない
SECから課徴金の10~30%が報奨金として
通報者に支払われるというのは合理的な制度だと思います。
現状、日本の内部通報制度は通報者の正義感や倫理観に頼っています。
通報者のプライバシーは保護されるとは言え、
バレたら会社にいられなくなることもあります。
それでも内部通報を期待するのであれば、
経済的な見返りが必要だと思います。
東芝は過去最大規模の課徴金になるそうなので、
米国と同じような制度があれば、まさに一攫千金です。
ただし、これ以上規制が強くなったら
上場は割に合わないと考える人が増えるのはずなので、
通報者への報奨金制度を導入するには、
まだまだ時間がかかりそうです。