東芝不正会計 第三者委員会の調査報告書のポイントまとめ

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Construction Platform / wwarby

東芝の不正会計について、
第三者委員会の調査報告書(要約版)が7月20日に公表され、
それを受けて21日に記者会見が行われました。  

記者会見を少しだけ見ました。  

記者から以下の厳しい質問を受けて、

第三者委員会の報告書から読み取れるのは、現場の暴走を管理不行き届きで見つけられなかったという記載ではなく、不正会計そのものに経営陣が関与したと、関与があったというふうに読み取れるのですが、だとすれば田中社長ご自身が部下に対してうそをつけ、ごまかせということを命じたという自覚はおありではありませんか。

田中社長が「ございません。」  
この回答をした瞬間の田中社長の表情と
記者からの大量のフラッシュがとても印象的でした。  

第三者委員会の調査報告書で社長の関与が認定されるということは、
調査を受けた人たちの証言が 「社長を裏切るもの」であったと想像できます。  

東芝の社長であれば、社内のことで
自分の意に沿わないことなど、今まで何もなかったはずです。  

果たしてあの瞬間は、どんな心境だったのでしょうか。。。  

話を戻して、今回は第三者委員会の調査報告書について
ポイントを解説したいと思います。

過年度決算の要修正額の内訳

第三者委員会の調査報告によると 過年度決算の要修正額は、
7年間で1,562億円でした。  

内訳は次のとおりです。

  • 工事進行基準 477億円
  • 部品取引 592億円
  • 経費計上 88億円
  • 半導体在庫 360億円
  • 東芝自主チェック分 44億円
  • 合計 1,562億円

それぞれ簡単に ① 不正の手口 ② 会計監査の難易度
という点に着目して内容を見てみます。  

工事進行基準 477億円

① 不正の手口 工事原価総額を低く見積もる、
実現可能性の低い原価削減計画を織り込む、
このような手口で工事損失引当金の計上を回避していました。  

意外だったのは、工事進行基準の要修正額が最も大きい訳ではなく、
不適切会計が発覚するきっかけに過ぎなかったことです。  

② 会計監査の難易度 工事進行基準を利用した不正を
会計監査で見つけるのが難しいのは、
今までの記事で言及したとおりです。

工事進行基準は不正のデパート
東芝の不適切会計に思う会計監査の限界  

部品取引(主にパソコン事業) 592億円

① 不正の手口 有償支給取引を利用していました。  

有償支給取引とは、
A 東芝が一括で部品を仕入れ、
B それを外注加工先に販売し、
C 部品の加工が完了したら東芝が買い戻す
という一連の取引です。  

東芝の一括仕入れにより、調達価格を抑えることが目的です。  

通常の有償支給取引であれば、
外注加工先への販売価格を調達価格と同一にし、
Bの時点では利益が出ないようにします。  

Cの時点で販売価格+加工賃の価格で
買い戻すことが決まっているためで、
外注加工先に納入するだけで利益が出ることはありません。  

それを東芝は、調達価格の5倍近い価格で販売し、
Bの時点で製造原価のマイナス計上(=利益計上)をしていたようです。  

② 会計監査の難易度

正直、この不正については 新日本監査法人に見つけて欲しかったです。  

なぜなら、見積り項目のように
会計処理に対する解釈が分かれることはありません。

どの角度から見ても完全なアウトです。  

また、丁寧に取引の流れを追うことで、
他の不正よりも見つけやすいと思います。  

第三者委員会の調査報告書でもこの取引に関してだけは、
会計監査人による統制が十分に機能していたとは評価し得ない
と、新日本監査法人に厳しい意見が書かれていました。  

経費計上 88億円

① 不正の手口

主に費用計上の先送りによる損益調整です。
東芝内ではキャリーオーバーと称されていたようです。  

② 会計監査の難易度

BS、PLに計上されている取引が適切か否か、
というのは比較的検証が簡単です。  

しかし、網羅性の検証はとても難しいです。
どこにも計上されていないものを 見つける必要があるためです。  

組織ぐるみで隠されたら見つけることはほぼ不可能で、
その点で新日本監査法人には同情できます。  

半導体在庫 360億円

① 不正の手口

販売可能性のない在庫の評価減の回避、
原価差額の配賦計算を操作することによる在庫の水増し
といった手口だったようです。  

② 会計監査の難易度

前者は嘘の説明をされたら発見は難しいでしょう。  
後者はできれば新日本監査法人に見つけて欲しかった。  

しかし、東芝のようなメガ企業の原価計算では
エクセルが軽く固まるぐらいのデータ量があります。

財務分析すら簡単にはできない可能性があります。  
やはり組織ぐるみであった点を考えると 同情の余地はあります。  

今回の決算要修正額で注意が必要なこと

決算の要修正額1,562億円に 含められていない項目があります。

  • 棚卸資産の評価
  • 固定資産の減損
  • 繰延税金資産の回収可能性

今後これらの資産の減損の要否および金額を検討し、
その結果次第で要修正額が拡大する可能性があります。  

のれんの減損は大丈夫か?

第三者委員会の調査報告書では触れられていないのですが、
東芝のBSに計上されている巨額の「のれん」の減損テスト
に問題がないのか気になります。  

正確な内訳は分からないのですが、
米原子力事業会社ウエスチングハウスを買収した際に
発生したのれんが大きいようです。  

有価証券報告書から読み取れる
のれん及びその他の無形資産の残高は、
2014年3月末時点で、1兆66億円(うち、のれんは5,801億円)、
2014年12月末時点で、1兆1,538億円(内訳不明)です。  

それに比べて株主資本の残高は
2014年3月末時点で、1兆2,290億円、
2014年12月末時点で、1兆4,264億円です。  

のれん及びその他の無形資産の 減損テストの結果次第で、
株主資本が吹き飛ぶぐらいのインパクトがあります。  

のれんの減損テストの監査は、

  • 有形固定資産の減損よりも
  • 繰延税金資産の回収可能性よりも
  • 工事進行基準よりも

難しいものだと思っています。  

第三者委員会の調査報告書では、
のれんの減損について触れられていません。  

したがって、当面は減損のリスクはない
と考えてもいいと思います。  

しかし、5年後、10年後という 中長期で考えた場合には、
巨額の「のれん」はリスクでしかありません。  

ウォーレン・バフェットのような長期投資がしたい場合は、
「のれん」を多額に計上している会社は避けた方が良いのではないでしょうか。

新日本監査法人の監査責任はどうなる?

第三者委員会の調査報告書が、 新日本監査法人に対して甘すぎる!
という批判もあるようです。  

私はそうは思いません。
(私は新日本監査法人と利害関係はありません。 自分の監査経験と照らしてそう思います。)  

むしろ、会計監査の実務を良く知っている人が作成している
という印象を持ちました。  

なぜかというと会計監査で、

  • できること
  • できないこと
  • 簡単なこと
  • 難しいこと

その線引きが絶妙だと思うからです。  

今後、公認会計士協会および 公認会計士監査審査会(金融庁)の検査により
監査責任が明らかにされるようです。  

新日本監査法人にはお気の毒ですが、
さすがに無傷ではいられないでしょう。  

今後の検査結果に注目したいと思います。