会計の90%が灰色と言われる理由

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東芝は17日に、東証からの指摘を受けて、適時開示の基準に違反があった旨を発表しました。

米原発子会社のウエスチングハウス(以下、WH)が
2012年から2013年度に計上した減損損失1,156億円を
公表していなかったというものです。

情報開示の姿勢に問題があるという以上に、
WHに対する「のれん」3,500億円を
減損していないことに関心を持ちました。

のれんを減損しない理由

東芝によれば、のれんを減損しない理由は、
WH単体決算と、連結決算との違いによるものです。

WH単体では、原子力事業を細分化し、
プラント毎、原発の監視・制御システム毎に採算を見て、
赤字のプラントを減損しました。

しかし、連結決算では、原子力事業全体として評価するため、
赤字のプラントがあったとしても、
他のプラントで赤字をカバーできていれば、
全体として減損は不要と判断します。

会計士であれば、「よくある話」だと理解できます。

しかし、一般投資家で、
この説明に納得できる人はどれだけいるのでしょうか。

のれんを減損したくないがための、
苦しい理由付けであることは間違いありません。

不正会計を行う余地は依然として存在する

元エンロンの財務責任者であるAndrew Fastow氏の言葉です。

日本語訳は、経営財務No.3236(2015年11月16日)から引用しました。

“Accounting isn’t straightforward – 10% is black and white and 90% is in the grey area,”
he said. “When you’re in the business world, being ethical is a lot harder than you think.”

「会計は簡単なものではない。10%が黒及び白で,90%が灰色である」
「実務界にいる限り,倫理というものは自分が考えているより難しい」

有名なパレートの法則(80:20の法則)というのがあります。

「全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出している」
という法則です。

パレートの法則に当てはめれば、
決算書の80%の金額は、20%の会計処理が占めています。

さらに、場合によっては
99%の金額を1%の会計処理が占めることもあります。

でもって、その1%の会計処理が「灰色」だからこそ、
会計には不正の余地があると、言っているのだと思います。

代表例が「のれんの減損」

のれんの減損テストは、非常に多くの見積りから成り立っていて、
個々の変数を少しいじるだけで、全く違う結果を得ることができます。

東芝の3,500億円の「のれん」であれば、
数百億円程度の金額は簡単に動くはずで、
「減損不要」という判断にすることも可能です。

そういう点で、
経営者の望む結果を得やすい会計処理であり、
エンロン元財務責任者が、「90%が灰色」と言うのは、
非常に納得できるわけです。

誤解のないように補足

合理的な理由付けができているのであれば、
「のれん」を減損しないことは、「不正」ではありません。

何をもって「合理的」というか、
その判断を客観的に行うことは難しく、
万人が納得するような基準はありません。

だからこそ「灰色」だという意味でご理解ください。