ファイナンス・リース取引の効率的な判定手順

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土地建物を借りている場合、
契約書の名前が
・賃貸借契約書であって
・リース契約書ではない

だからリースなのか、
レンタル(賃貸)なのか、
リースとレンタルの違いは何なのか?

このような疑問を持ったことはないでしょうか。

そして、その疑問がわく理由は、
リースでなければリース会計の対象外になって、
資産計上しなくてもいいのではないか?
と、期待することにあります。

結論から言えば、
リース会計では、リースとレンタルを分けていません。
同じくくりで考えています。

どちらも、リース取引だとした上で、
資産計上するか否か
つまり、ファイナンス・リースに該当するか否か
を検討する必要があります。

店舗型のビジネスを展開している場合や
事業拠点を多く持っている場合、
賃貸借契約書が大量に存在するので、
ファイナンス・リースの判定にたいへん苦労します。

また、ファイナンス・リースの判定が甘く、
実は、資産計上が必要だったが、漏れていた
という会社もけっこう多く見てきました。

そこで今回は、ファイナンス・リースの判定を
どうすれば効率的にできるのか、
そのための手順を解説します。

「そんなの知っているよ」という方も
復習がてら、ご覧いただければ幸いです。

リース資産・負債を計上することのメリット

まず、リース資産・負債を計上することに
メリットはあるのでしょうか。

リース資産を計上すると、
・固定資産台帳に登録し減価償却計算をする手間
・リース料の支払いを元本の返済と利息の支払いに分ける手間
が発生し、管理工数が増加します。

適正な開示という意味では、
簿外のリース資産とリース債務がなくなるので、
それなりにメリットがあります。

解約できないリース契約や賃貸借契約は、
・将来にわたり支払い続けることを約束している
・実質リース物件を購入したのと同じ
ということなので、BSに計上すべきという考えです。

しかし、経理実務の面では、面倒なことが増えます。

資産計上することで、「資産管理の意識が高まる」
という考えも、できないことはありません。

それでも、管理工数を上回るほどのメリット
を感じる人は少ないと思います。

したがって、ファイナンス・リースの判定は
できるだけリース資産を計上したくない、
そのように考える人が多いのではないでしょうか。

ファイナンス・リース取引の判定を効率的に行うための手順

効率的に進めるために、リース会計基準に書いてある順番とは
少し違う順番で検討を進めます。

STEP1 解約不能の判定

まず、資産計上の対象となる
ファイナンス・リース取引の定義を確認します。

リース会計適用指針

5 ファイナンス・リース取引とは、次のいずれも満たすリース取引をいうとしている(リース会計基準第5項)。

(1) リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引(以下「解約不能のリース取引」という。)
(2) 借手が、当該契約に基づき使用する物件(以下「リース物件」という。)からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引(以下「フルペイアウトのリース取引」という。)
リース取引がファイナンス・リース取引に該当するかどうかは、これらの事項を十分に考慮して判定する必要がある。

ここでまず注目すべきは、
(1)リースが中途解約できるかどうかです。
(2)のフルペイアウトの要件は判定に時間がかかるので、
とりあえず無視します。

というのは、(1)と(2)の要件は両方充たす必要があるので、
中途解約できる時点でファイナンス・リース取引に該当しません。

そこで、契約書で見るべきポイントを
中途解約できるか否か
中途解約するための条件

ここに絞ります。

中途解約ができる時点で、資産計上が不要になるため、
判定の対象から切り捨てることができます。

中途解約するための条件とは、
ざっくり言えば、違約金の金額が大きいかどうかです。

ここでも、リース会計基準の文言を確認します。

リース会計適用指針

6 解約不能のリース取引に関して、法的形式上は解約可能であるとしても、解約に際し、相当の違約金(以下「規定損害金」という。)を支払わなければならない等の理由から、事実上解約不能と認められるリース取引を解約不能のリース取引に準ずるリース取引として扱う(リース会計基準第36項)。リース契約上の条件により、このような取引に該当するものとしては、次のようなものが考えられる。

(1) 解約時に、未経過のリース期間に係るリース料の概ね全額を、規定損害金として支払うこととされているリース取引
(2) 解約時に、未経過のリース期間に係るリース料から、借手の負担に帰属しない未経過のリース期間に係る利息等として、一定の算式により算出した額を差し引いたものの概ね全額を、規定損害金として支払うこととされているリース取引

コピー機や車両のような動産は、
契約上、まず中途解約できません。

少なくとも、私は今までに解約できるような契約を見たことがありません。

中途解約が論点になるのは、ほとんど不動産です。
そこで、中途解約するための条件として、
不動産の賃貸借契約書に書かれている「よくある事例」を見てみましょう。

よくある事例1

「賃借人は賃貸人に対し得て3か月前までに書面により、
予告すれば中途解約可能、
もしくは、3か月分の賃料を支払えば即時解約可能」

→ 1か月、3か月、5か月などのパターンが考えられますが、
このケースは解約可能と考えて大丈夫です。
ファイナンス・リース取引ではないと判断して、
資産計上の検討から切り捨てましょう。

よくある事例2

「12か月前までの書面による通知、
および敷金の返還請求権の放棄、
さらに賃料の6か月分の支払で中途解約可能」

→ けっこう厳しい条件です。立地条件の希少性などから、
貸主が強い場合は、このような契約もよくあります。
ただし、この場合でも解約できると考えて良いと思います。

よくある事例3

「賃貸借開始日から満20年以内に本契約を解約した場合は、
賃貸人に預託した敷金を放棄し、中途解約の日から20年経過までの
残存期間の未経過賃料相当額を違約金として支払う。
なお、20年経過以降については敷金の放棄により中途解約できる。」

→ ここまで厳しい条件だとあきらめましょう。
少なくとも20年は解約不能です。
リース資産計上の次の検討ステップへ進んでください。

STEP2 現在価値基準と経済的耐用年数基準

STEP1で、解約不能のリース取引と判定された場合、
STEP2では、2つの判定基準に当てはめることになります。

現在価値基準と経済的耐用年数基準です。
以下、リース会計基準の抜粋です。

リース会計適用指針

9 リース取引がファイナンス・リース取引に該当するかどうかについては、第5項の要件を満たす必要があり、その経済的実質に基づいて判断すべきものであるが、次の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合には、ファイナンス・リース取引と判定される。[設例1][設例2]

(1) 現在価値基準
解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値が、当該リース物件を借手が現金で購入するものと仮定した場合の合理的見積金額(以下「見積現金購入価額」という。)の概ね90パーセント以上であること(以下「現在価値基準」という。)
(2) 経済的耐用年数基準
解約不能のリース期間が、当該リース物件の経済的耐用年数の概ね75パーセント以上であること(ただし、リース物件の特性、経済的耐用年数の長さ、リース物件の中古市場の存在等を勘案すると、上記(1)の判定結果が90パーセントを大きく下回ることが明らかな場合を除く。)(以下「経済的耐用年数基準」という。)

2つの判定基準については、動産と不動産に分けて解説します。

動産の場合

まず注目すべきは(2) 経済的耐用年数基準です。
簡単だからです。

経済的耐用年数(ほとんどは法定耐用年数)と
リース期間を比較するだけで判定できます。

判定するとはいえ、コピー機や車両のような動産はほぼ、
75%の条件に当てはまります。

(1)の現在価値基準については、「見積現金購入価額」が契約書で
明示されているケースは少ないこと、
(2)でほぼ資産計上の要件を充たしてしまうこと
から、あまり使われないです。

なので、動産において、資産計上を回避するには、
300万円の金額基準に頼ることになります。

リース会計適用指針

(少額リース資産及び短期のリース取引に関する簡便的な取扱い)
34 個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合は、オペレーティング・リース取引の会計処理に準じて、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができる。

35 個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合とは、次の(1)から(3)のいずれかを満たす場合とする。

(1)重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、リース料総額が当該基準額以下のリース取引
 ただし、リース料総額にはリース物件の取得価額のほかに利息相当額が含まれているため、その基準額は当該企業が減価償却資産の処理について採用している基準額より利息相当額だけ高めに設定することができる。また、この基準額は、通常取引される単位ごとに適用されるため、リース契約に複数の単位のリース物件が含まれる場合は、当該契約に含まれる物件の単位ごとに適用できる。
(2)リース期間が1年以内のリース取引
(3)企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース取引で、リース契約1件当たりのリース料総額(維持管理費用相当額又は通常の保守等の役務提供相当額のリース料総額に占める割合が重要な場合には、その合理的見積額を除くことができる。)が300万円以下のリース取引

なお、(3)の場合、1つのリース契約に科目の異なる有形固定資産又は無形固定資産が含まれている場合は、異なる科目ごとに、その合計金額により判定することができるものとする。

リース車両の維持管理費用について補足があります。

車検や保険などの維持管理費用がリース契約に含まれている場合、
当該金額をリース料から除く必要があるのですが、
それが契約書で明示されているケースは少ないです。

なので、実務上は、維持管理費用をリース料から除くことなく、
リース料総額の現在価値を資産計上の金額とすることが多いです。

維持管理費用を除かない理由は、
重要性に乏しいからです。

不動産の場合

判定が難しいのは、動産よりも不動産です。

(2) 経済的耐用年数基準だけで良いのなら簡単なのですが、
どちらか1つの要件を充たすと資産計上が必要になるので、
(1) 現在価値基準を避けて通ることはできません。

そして、現在価値基準の判定を行うには、
リース料総額を土地と建物に按分する必要があります。

これがけっこう大変です。

土地はどれだけ使っても価値が減らないので、
オペレーティング・リース(資産計上しない)になります。

建物は、価値が減るので、
ファイナンス・リース(資産計上する)になる可能性があります。

つまり、建物分だけがファイナンス・リースの判定対象になるので、
両者を区分する必要があるわけです。

では、どうやって分けるのか。
まず、リース会計基準を確認します。

リース会計適用指針

99 また、土地と建物等を一括したリース取引は、土地が無限の経済的耐用年数を有し建物等と異なる性格を有することを踏まえ、リース料総額を合理的な方法で土地に係る部分と建物等に係る部分に分割した上で、第9項(1)に定める現在価値基準の判定を行うこととしている(第20項参照)。リース料総額を土地に係る部分と建物等に係る部分に合理的に分割する方法としては以下が考えられ、このうち最も実態に合った方法を採用する。

(1) 賃貸借契約書等で、適切な土地の賃料が明示されている場合には、全体のリース料総額から土地の賃料を差し引いた額を、建物等のリース料総額とする。
(2) 全体のリース料総額から土地の合理的な見積賃料を差し引いた額を、建物等のリース料総額とみなす。合理的な見積賃料には、近隣の水準などを用いることが考えられる。
(3) 全体のリース料総額から土地の時価に借手の追加借入利子率を乗じた額の総額を差し引いた額を、建物等のリース料総額とみなす(借手の場合)。

100 前項(1)のように適切な土地の賃料が契約書で明示されているなどの場合を除いては、借手においては、リース料に含まれている土地の賃料相当の金額の算出は容易ではないことが想定される。したがって、借手においては、ファイナンス・リース取引に該当するか否かが売却損益の算出に影響を与えるセール・アンド・リースバック取引を除き、土地の賃料が容易に判別可能でない場合は、両者を区分せずに第9項(1)に定める現在価値基準の判定を行うことができるものとする。

不動産の賃貸借契約上で、
土地と建物の賃料が別々に記載されていれば、
話は早いです。

また、賃貸借契約が金額的に重要でない場合、
両者を分けないことも認められています。
(リース適用指針第100項)

しかし、これらの条件に当てはまらず、
どうしても両者を区分しなければならない場合は、
土地と建物の時価を見積もって、両者の比で按分する
これ以外に良い方法はないと思います。

土地の時価は路線価などの簡単に取れる数字を使い、
建物は類似物件の建築費の実績を使う

これがもっとも現実的な方法ではないでしょうか。

具体的な計算方法を、どうしても知りたいという方は、
個別にお問合せください。
計算例などと一緒にお伝えいたします。

再リースの検討

現在価値基準、経済的耐用年数基準による
ファイナンス・リースの判定を行うとき

借手が再リースを行う意思が明らかな場合は、
再リース期間と、その期間のリース料を
解約不能のリース期間およびリース料総額に
含める必要があります。

リース会計適用指針

11 第9項における現在価値基準の適用にあたっては、当該リース取引が置かれている状況からみて借手が再リースを行う意思が明らかな場合を除き、再リースに係るリース期間(以下「再リース期間」という。)又はリース料は、解約不能のリース期間又はリース料総額に含めない。現在価値基準を適用する場合のリース料総額の現在価値は推定額であるが、当該現在価値がリース物件の見積現金購入価額の概ね90パーセント以上の場合は、借手は当該リース物件の取得価額相当額、維持管理等の費用等ほとんどすべてのコストを負担することになり、したがって、ほとんどすべての経済的利益を享受するものと推定できるため、当該リース取引はファイナンス・リース取引と判定する。

12 第9項における経済的耐用年数基準の適用にあたっては、当該リース取引が置かれている状況からみて借手が再リースを行う意思が明らかな場合を除き、再リース期間は解約不能のリース期間に含めないものとし、また、リース物件の経済的耐用年数は、物理的使用可能期間ではなく経済的使用可能予測期間に見合った年数による。経済的耐用年数基準に該当するリース取引は、通常、借手がリース物件からもたらされるほとんどすべての経済的利益を享受することができ、したがって、ほとんどすべてのコストを負担するものと推定できるため、当該リース取引はファイナンス・リース取引と判定する。

再リースを行う意思というのは、
・過去の実績
・経営方針
・原状回復費用の多寡
といったポイントで判断するのが一般的のようです。

しかし、不動産リースの契約は長期にわたります。
「10年後、20年後に契約更新することが明らかだ。」
このように言い切ることは難しいので、
再リース期間を含めることは稀です。

仮に含める場合、リース期間とリース料総額が大きくなり、
・100%ファイナンス・リースと判定される
・資産・負債計上額が膨れ上がる
という結果になります。

わざわざ、すき好んで再リース期間を含める
必要はないと思っています。

STEP3 所有権移転ファイナンス・リースの検討

ファイナンス・リースと判定され、
資産計上が必要となったリース取引については、
所有権移転か、所有権移転外かの判断を行います。

どちらに該当するかによって、会計処理が異なるためです。
判断基準は、以下のとおりです。

リース会計適用指針

10 前項でファイナンス・リース取引と判定されたもののうち、次の(1)から(3)のいずれかに該当する場合には、所有権移転ファイナンス・リース取引に該当するものとし、それ以外のファイナンス・リース取引は、所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当するものとする。[設例1][設例2]

(1)リース契約上、リース期間終了後又はリース期間の中途で、リース物件の所有権が借手に移転することとされているリース取引
(2)リース契約上、借手に対して、リース期間終了後又はリース期間の中途で、名目的価額又はその行使時点のリース物件の価額に比して著しく有利な価額で買い取る権利(以下合わせて「割安購入選択権」という。)が与えられており、その行使が確実に予想されるリース取引
(3)リース物件が、借手の用途等に合わせて特別の仕様により製作又は建設されたものであって、当該リース物件の返還後、貸手が第三者に再びリース又は売却することが困難であるため、その使用可能期間を通じて借手によってのみ使用されることが明らかなリース取引

会計処理の違いは次のとおりです。
リース会計基準に書いてあるとおりで、
特に難しい論点もないので、さらっといきます。

所有権移転外ファイナンス・リースの会計処理

(耐用年数)
原則としてリース期間を耐用年数とする

(償却方法)
自己所有の固定資産と同じ償却方法でなくてもよい
ほとんどの会社が定額法を採用している

(利息費用の各期への配分方法)
原則として利息法
重要性が乏しい場合には、以下のいずれかを選択
① 利息を支払リース料から区分しない方法(減価償却費のみ計上)
② 定額法

所有権移転ファイナンス・リースの会計処理

(耐用年数)
自己所有の固定資産と同じ耐用年数

(償却方法)
自己所有の固定資産と同じ償却方法

(利息費用の各期への配分方法)
利息法
簡便的方法は認められていない

IFRSとの差異

リース会計基準が改正されたのが平成19年3月で、
平成21年3月期から適用されています。

従来は、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、
賃貸借処理(資産計上しない)が認められていましたが、
売買処理(資産計上する)に一本化されました。

本来、このタイミングですべてのファイナンス・リース取引について
資産計上すべきだったのですが、
実務への配慮から日本基準では例外規定を設けました。

改正基準適用前に締結したリース取引は、
売買処理を原則としながらも、
従来の賃貸借処理を継続できるという規定です。

もう1つの例外規定が
前述の少額リースの300万円基準です。

リース会計について、日本基準とIFRSとの差異はあまりないのですが、
この例外規定を採用していると、大きな差異になってきます。

日本基準で例外規定を使用して資産計上していない場合、
IFRSでは過去に遡って資産計上する必要があり、
けっこうな手間になるので、ご注意ください。

 

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
今回の記事が、お役に立てば幸いです。