星野リゾート 星野社長の講演へ

7月6日は公認会計士法が制定された日で、
日本公認会計士協会が 「公認会計士の日」として定めています。
先日、「公認会計士の日」記念特別講演があり、
講師は星野リゾートの星野佳路社長でした。
テーマは「観光立国への道」です。
テーマ自体に関心があった訳ではありませんが、
非常に有益で面白い話を たくさん聞くことができました。
講演は、 1.自己紹介 2.戦略論の話 3.観光立国への道
という順番で進められました。
自己紹介
一番こだわっている数値目標
- 年間60日スキーに行くことを目標にしている。
- 数値目標としては売上よりも、利益よりもこだわっている。
- スキーのために年間スケジュールを先におさえ、残った日で仕事をすると割り切っている。
戦略論の話
戦略の教科書
- 自分の直感に自身が持てないので、教科書に頼る。
- マイケル・ポーターの「競争の戦略」が教科書で、これを忠実に再現してきた。
- 20数年、社員研修で毎年ポーターの話をしていたらポーター本人が目の前にあらわれ、ポーター賞をもらった。
社長就任以来、最大の意思決定
- 運営と所有の分離
- どこも自分で旅館を所有し、自分で運営していた。
- 星野リゾートは運営に特化した。その結果、本来は競合になる大手のリゾート開発がお客様のような存在になった。
運営特化のメリット
- 債務が増えない。
- 展開が速い。金融機関の説得もいらない。
デメリット
- 施設のコントロールができない。
- 地位の保全ができない。出ていけと言われればクビになる。
トレードオフ
- 一方を追求すれば他方を犠牲にするというポーターの考え方
- 運営特化が、星野リゾートが国内の競合に迫ってきたトレードオフであり、競合にとって多大な犠牲を強いるもの。簡単には模倣できない。
観光立国への道
課題は4つ
1.世界中で旅行者が急増しており、国際的な獲得競争がおきている
- 海外から日本への旅行者数(インバウンドという)がここ3年で急増している。
- しかし、インバウンド数の世界またはアジアにおける順位は変わっていない。
- 日本の競争力が増しているのではなく、マーケットが強過ぎるだけ。
2.インバウンド数は伸びているが、地域偏重が大きい
- 海外旅行者の行く場所が集中している。東京、大阪、北海道、京都、千葉の上位5つで全体の65%を占める。
- 日本は新幹線の駅とつながっている空港がなく、観光地への移動が不便。
- 地域偏重解消のため、オリンピックを有効活用するべき。分散開催を提案している。
3.日本人の国内旅行需要が減少している。維持・拡大が必要。
- 国内旅行はアウトバウンドという。
- インバウンドよりも圧倒的に需要がある。
- 20代男子の落ち込みが最も大きいが、逆に20代女子の落ち込みは最も小さい(女子旅がブーム、母と娘の旅行も多い)。
4.日本の観光産業は収益率が低く、需要のわりに地域経済に貢献できていない。
- 日本の旅館は生産性が低く、稼ぐ力が弱い。
- 年間の100日は黒字(平日)だが、265日は赤字(休日)のため、100日しか人がいらない。非正規雇用が75%を占める。きちんと収益を出せる産業にし、正規雇用を増やす。
- 需要のピークを平準化させるべきで、連休の分散を提案している。
観光業は平和維持産業だ!
- トヨタの車を買ってもトヨタを好きになる訳ではない。
- しかし、観光は日本を好きになる。これが観光業の大きな特徴。
- 100 TRIP STORIESという企画をやっている。世界の若者100人へ日本旅行をプレゼントする代わりにレポートを書いてもらっている。
90分という持ち時間ぴったりに 講演を終えられていましたが、
まだまだ話すことはあるという雰囲気でした。
話の内容が面白いことはもちろんのこと、
スライドでの写真の見せ方、話し方、 身振り手振り、伝える順番など
勉強になることばかりでした。
貴重な講演をありがとうございました。